良い枕には、様々な条件があります。条件を満たしていない枕を使用していると、肩こり、頭痛、手足のしびれ、寝付きが悪くなる、といったものの原因となります。
それでは、重要度別に条件を見ていきましょう。
最も重要な条件 : 自分に合っている
重要な条件 : 首をやさしく支える、寝返りを邪魔しない
普通の条件 : 通気性・放熱性が高い、清潔である(水洗いできる)
その他の条件(参考までに掲載します) : 寿命が長い、香りが良い
これらの条件に多く当てはまるものほど、良い枕といえます。これらの条件のほかに、陰イオン効果、磁力による血行促進などの効果を付加させた枕もあります。しかし、昔から良い枕に要求されている条件は以上のようになると思われます。以降、それぞれの条件について解説していきます。
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上でも書いた通り、良い枕の最も重要な条件は自分に合っているということです。統計的に、また人間の背骨の構造から考えて、最適な枕の高さはある程度分かっています(首をちゃんと支えてくれる枕参照)。
しかし、背骨の構造、体重、頭頂部の形など様々な要素の個人差が存在し、本当に最適な高さは個人個人によって微妙に違います。また、枕の感触、硬さ・柔らかさについても、人の好みによって大きく変わってきます。羽根、シルク素材など柔らかめの感触を好む人もいれば、そばがら、ソフトパイプなど硬めの感触が好きな人もいます。最近では低反発ウレタンの独特の感触が人気を集めています。
どれにしろ、自分に合った枕を使うことが一番大切なことです。もし、枕を買い換える予定がある方は、今まで使っていた枕と似た感触を選ぶのもいいかもしれません。しかし、まったく違った感触の枕でも、数週間使えば慣れてくるものです。
以上のことを頭に置きつつ、次の条件を見てみましょう。
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先ほど挙げた、重要な条件の一つです。是非、参考にしていただきたいと思います。
人間は重い頭を支えながら二足歩行するために、S字のカーブを描く独特な背骨の形をしています。人間にとって最も楽な姿勢は、直立して顔を5°だけ下に傾けた姿勢といわれています。枕には、横になっているときも、背骨の起点である首の骨を支えることで、背骨のS字カーブを無理なく保ち、最も楽な姿勢を維持する役割があるのです。そうすることでスムーズな入眠をサポートし、睡眠で最も大切だと言われる最初の90分で熟睡することができます。
しかし、枕がちゃんと首を支えてくれなければ、首の筋肉や骨に負担をかけ、気道を狭めることになります。首には、脳と全身をつなぐ重要な神経が通っており、ここに負担をかけることは良いことではありません。また、首の筋肉は肩の筋肉と繋がっており、首の筋肉に負担をかけると、首のコリ、肩のコリの原因になったりすることもあります。また、睡眠中に気道を狭めるとイビキの原因となり、周りに迷惑をかけるだけでなく、睡眠中の呼吸を阻害し、熟睡できなくなります。
つまり、良い枕とは、首をちゃんと支えてくれる枕であるということです。枕がちゃんと首を支えるためには、「その人に合った高さ」、「適度なフィット性」の二つの要素が不可欠です。
@その人に合った枕の高さ
その人に合った枕の高さといっても、それは個人個人で違います。自分に合った枕を選びましょう。最近はその人に合った高さの枕をオーダーメイドしてくれる枕屋さんもありますので、そこを利用するのもいいかもしれません。
今回は、一般的にどのような人がどのくらいの高さの枕が合っているかの傾向を見てみましょう。ちなみに、枕の高さとは、頭を乗せた時の高さのことを指します。
枕の適切な高さの平均は、女性が3cm弱、男性は4cm前後です。基本的に体重が重い男性は、頭や肩の部分が女性よりも沈みこみますので、高めが適しています(男性は骨格がしっかりとしているため、背骨のS字カーブがはっきりしているのも一因です) 。
加えて、スリムな体型で首が長めの方は、首の沈みこむ深さが浅い傾向にあるため、0〜1cmほど枕の高さを低くするといいかもしれません。肥満体の方は枕がより沈み込みますので、1〜2cmほど枕を高くすると良いです。猫背の方は0〜1cm高めにすることで、枕が頭と首にフィットするようになります。
軟らかく沈み込みやすいベッドは、ベッドの沈み込みを調整するために、枕を約1cm低めにすると良いでしょう。
横向きに寝るときは、肩幅の分だけ頭と首の位置を0〜1cm高くする必要があります。
このように計算された高さを目安に、実際に使いながら自分で高さを微調整しましょう。中の素材を抜いたり、入れたりできる枕は、自分で高さを調整できます。睡眠中は寝返りを打ち、横向きで寝ることも多いので、仰向け、横向きの両方の寝心地を確かめながら自分で枕の高さを微調整しましょう。
例:猫背で柔らかいベッドを使っている女性の場合
3cm(女性の平均) + 0〜1cm(猫背分) - 1cm(柔らかいベッド分) =
2〜3cm となり、この2〜3cmを目安に、枕の中の素材を抜いたり、入れたりして微調整すると自分に最適な枕の高さが実現できます。
また、枕のコンサルタント加藤勝也さんの論文「枕の高さについての考察」(2000)によれば、枕の高さは3cmが最適である人が多いらしく、女性の90%以上が、骨格の違いに関わらず、3cmを快適であると感じている事を指摘しています。
一方で、高さが6cmの時に脳波が安定してリラックスし、筋肉の緊張を和らげるという実験データも存在します。
枕の高さは、骨格の違い、寝方の違い(仰向け、横向きなど)があり一概にこれが良いというわけではないので、色々試してみて自分に最適な高さを見つけてください。中の素材を出し入れしたりして、高さを微調整できる枕がオススメです。
A適度なフィット性
枕に頭を乗せたとき、中身の素材が流動、変形することで、首を理想的な形で支えるように変化することが大切です。首の筋肉は肩の筋肉と繋がっており、首の支えがないと、首、肩の筋肉に負担をかけ、肩こりの原因にもなります。しかし、やわらかすぎて沈み込みすぎる枕を使うと、良い眠りのもう一つの重要な条件である寝返りを阻害し、逆に安眠できませんのでお気をつけください。